先進医療は、極論を言うと、高い費用を払って、実験台になるようなもの。従来型の医療技術で治療できない場合に限りましょう。

治療法は、その有効性と安全性が認められたら、健康保険など公的医療保険が適用されます(治療費の自己負担が1~3割りになります)。
要するに、効果や安全性が疑わしい治療法について、健康保険など公的医療保険が、治療費の7~9割を負担するわけにはいかない、ということです。

先進医療は、健康保険など公的医療保険が適用されません。実費全額を、患者が負担します。その意味では、有効性や安全性が確立されていない医療、ということです。

もっとも、怪しい民間療法とは同列に置けません。先進医療は、厚生労働省によって将来有望と認められた治療法です。治療は、医療技術ごとのルールにのっとって進められます。

とは言え、高額な治療費を負担して、それがムダになる可能性だって、それなりにあります。
2015年の8月に、その事実を印象付けるできごとがありました。

先進医療会議で、粒子線治療の優位性に疑問符

先進医療の中でも、実施件数が伸びている医療技術に、陽子線治療(2014年度2916件)、重粒子線治療(2014年度1639件)があります。
がん等の治療で広くおこなわれている放射線治療の進化バージョンとして期待されています。
ちなみに、どちらも費用は300万円前後。

陽子線治療は2001年、重粒子線治療は2003年から先進医療として実施されてきました。すでに10年以上が経過しています。
それだけの期間が経過しているにもかかわらず、従来の治療法を超える効果が立証できていないようで、いまだ保険適用となっていません。

それどころか、2015年6月の日本放射線腫瘍学会の報告によると、小児がん、骨・軟部腫瘍、頭頸がん、肝がんの一部、肺がんの一部には、粒子線治療の効果が認められるものの、それ以外については優位性を証明できなかったとのこと。

あくまでも、従来型の放射線治療との比較で、優位性を証明できないということです。効果がないとか、有害だったわけではありません。
また、今後の研究・開発しだいでは、強力な医療技術として発展するかもしれません。

とは言え、これまでに、数十倍の治療費を負担して治療を受けた患者にすれば、がっかりなお知らせでしょう。

先進医療を受けるのは、従来型の医療技術で治療できない場合

粒子線治療が今後どうなっていくかはわかりませんが、先進医療に登録された医療技術の中には、否認、取り下げられたものが多数あります。

先進医療を受けるかどうかは、それぞれがじっくりと考えて決めるしかありません。
しかし、そもそも先進医療は、日本を代表する医療の専門家ですら、有効性を明言できない医療技術です。素人がどれだけ考えたところで、まともな結論を導き出せるとは思えません。

一般論としては、保険適用のある治療法を使える病気での、先進医療の採用は慎重であるべきでしょう。
治療費が高額になるだけではありません。先進医療をおこなえる施設は限られるので、交通費や宿泊費などもかさみます。また、先進医療で治療した部位については、近所の病院・診療所では診てもらえないかもしれません。
有効性が約束されていない上に、いろいろな負担やリスクがあります。

ただし、既存の治療法では直せないということなら、話は別です。
粒子線治療の有効性が認められたのも、既存の医療技術では、せいぜい症状を緩和するくらいしかできない病状のケースでした。


実施件数の多い(年間100件以上)先進医療の費用を調べました。数千円~300万円少々まで、幅広いです。

先進医療は、健康保険などの公的医療保険が適用にならないため、費用が心配になります。そこで、実施件数の多い先進医療について、その費用を調べました。

中央社会保険医療協議会で報告された『平成26年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について』から、年間実施件数100件以上の先進医療技術の、1件あたりの費用を算出しました。

医療技術名 年間件数 1件あたりの費用
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 130 301,000
陽子線治療 2,916 2,635,433
重粒子線治療 1,639 3,086,917
CYP2C19遺伝子多型検査に基づくテーラーメイドのヘリコバクター・ピロリ除菌療法 211 11,121
非生体ドナーから採取された同種骨・靱帯組織の凍結保存 127 261,100
歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法 371 59,215
自己腫瘍・組織及び樹状細胞を用いた活性化自己リンパ球移入療法 144 409,085
EBウイルス感染症迅速診断 307 13,509
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術 7,026 509,863
実物大臓器立体モデルによる手術支援 392 89,397
IL28Bの遺伝子診断によるインターフェロン治療効果の予測評価 218 19,635
前眼部三次元画像解析 7,458 3,857
硬膜外自家血注入療法 641 35,911
食道アカラシア等に対する経口内視鏡的筋層切開術 294 155,077
術後のホルモン療法及びS-1内服投与の併用療法(原発性乳がん) 560 365,461

全体で95ある先進医療技術の、一部を抜き出しただけですが、金額は幅広いです。
参考までに、平成26年度に実施された先進医療A(実施条件がゆるやかな方の先進医療)の、治療1件あたりの平均は741,922円です。


先進医療給付金(特約)は必須ではありません。しかし、迷うなら、付けることをオススメします。

先進医療を受ける可能性は低いし、医療保険で用意しなくても、いざとなったら、費用をまかなえるかもしれません。
必須の保障ではないと思います。

それでも、付けるかどうかを迷われるなら、付けることをオススメします。

生きるか死ぬかの病状で、先進医療という選択肢を確保

やはり、生きるか死ぬかの病状で、既存の治療法では対処できないとなれば、先進医療という選択肢があることは大きいです。
粒子線治療であれば、上の表の通り300万円前後の費用です。治療を受けたくても、治療費が大きな壁になりかねません。

今、迷われているのであれば、万が一の後悔をしないために、付けた方がいいでしょう。
起こる可能性がゼロではなくて、そのことに不安を感じるなら、その不安を和らげるのが、保険の働きの一つです。

先進医療の保障は、保険料が安い

保険料の見積もりをご覧になればわかるように、先進医療の保障の保険料は、安いです。月あたりで100円に届くかどうか、という金額です。

チリも積もれば山となりますから、安いというだけで保障を増やすことはダメです。ただ、先進医療に関しては、上にあげたメリットがあるので、ムダではないと思います。

ちなみに、保険料が安いということは、それを使う人が少ないということです。使う人が少ないから、保険料を安くしても保険会社の損にならない、という仕組みです。


先進医療給付金が、標準で付いている医療保険は、念のために警戒です。気配りかもしれないし、金もうけ主義なのかもしれません。

あくまでも印象ですが、市販されている医療保険の4割前後は、先進医療給付金が、標準で付いています。それ以外は、特約として用意されていて、付けるか付けないかを加入者が選べるようになっています。

上に書いたとおり、先進医療の保障そのものには、意味があります。
その考え方によれば、先進医療給付金が標準で組み込まれていることは、悪いことではありません。加入者が、うっかり大事な保障を付け忘れないように、気を利かせていると、受け取れなくはありません。

使いそうにない保障が複数組み込まれている保険に注意!

しかし、一方で、先進医療の保障は、必要不可欠とは思えません。必要性が低いものを、標準で組み込んでいるというのは、嫌な感じです。

保障が使われなければ、そのぶんの保険料は、保険会社の収益になります。金もうけ主義の保険商品には、必要性の疑わしい保障が、たくさん主契約(基本保障)に組み込まれています。
もし、そういうノリで、先進医療給付金が、標準で組み込まれているのだとしたら・・・

標準で組み込まれている保障を、他社と比べてチェック

先進医療の保障が標準で組み込まれているのが、気を利かせてのことなのか、金もうけ主義なのか。

それを見分けるためには、複数の他社の医療保険と比べてみましょう。
もし、金もうけ主義の医療保険なら、他社が特約としている保障を、他にも標準で組み込んでいるはずです。

それで、保険料が安いのなら、充実の保障と言えます。
でも、たいていは他社より保険料が高いです。どんなに美しい言葉でアピールしていても、油断できません。

別の見方をすると、先進医療の保障は、保険会社の誠意を見分ける、わかりやすい判断材料の一つです。

 ご注意

統計データや保険の商品内容については、慎重に扱っていますが、古くなっていたり、誤りがあるかもしれません。保険の専門家に相談した上で、最終的に判断を下してください。