医療保険が保障するのは、主に入院費用。それは、わたしたちが負担する医療費の一部でしかありません。

厚生労働省保険局の『医療保険に関する基礎資料』(平成26年12月)によると、日本人の医療費負担(自己負担分)の平均は、グラフのようになっています。
ちなみに、「保険料」というのは、健康保険など公的医療保険の保険料です。

ご覧のように、50代までは、私たちが負担する医療費の大半は、健康保険などの保険料(グラフのオレンジ色)です。

医療保険が保障するのは、主に入院の費用で、グラフの紺色の部分です。
こうしてみると、医療保険がカバーする範囲は、一部分でしかありません。

つまり、将来の医療費の準備は、預貯金・年金・医療保険などをひっくるめて、総合的に進めていかなければなりません。

別の言い方をすると、医療保険に加入しても、医療保険の保障を手厚くしても、それで安心というわけではない、ということです。

よって、医療保険に加入するとしても、そのための保険料を必要最小限度にとどめて、浮いたお金をしっかりと貯金する方が、将来に向けてのより良い準備と言えそうです。


入院日数は、年々短くなっています。それに合わせて、医療保険にかける保険料もシェイプアップしましょう。

医療保険の中心は入院費用です。
通院を保障する医療保険はありますが、そのほとんどは、入院の前後の通院に限定されています。
そして、入院日数は年々短くなっています。

図は、厚生労働省『患者調査』から、3年毎の全国の平均入院日数を抜き出したグラフです。

入院日数は、着実に年々短くなっています。

入院日数が、年々短くなっている理由

短くなっていることには、理由があります。いくつかを上げます。

  • 医療技術の進歩。
  • 国が社会保障費の支出をおさえるために、病院が入院期間を短縮したくなるように、診療報酬制度を運営している。
  • 高齢化社会にともなう医師不足から、病院としても、患者一人一人にだんだん時間をかけられなくなっている。

たまたま短縮化しているわけではなくて、複数の理由があります。

入院日数の短縮化は、たぶん今後も続く

おそらく入院日数の短縮化は今後も続きます。
というのは、国の医療費の歳出が増え続けているからです。まあ、医療費だけではありませんが。

そして、実は、日本の平均在院日数は、他の先進国と比べて、異常に(?)長くなっています。
下の表は、OECD(経済協力開発機構)の統計による、先進国の平均在院日数です(2012年)。

国名 平均在院日数
アメリカ合衆国 6.1日
イギリス 7.2日
ドイツ 9.2日
フランス 9.1日
スウェーデン 5.8日
日本 31.2日

良し悪しは別にして、国の医療費の歳出をおさえる対策として、入院日数の短縮化は、避けられないように思えます。

現在販売されている医療保険の多くは、入院1回あたり60日までの保障となっています。
将来、欧米並みの在院日数になったら、60日だって長すぎることになるでしょう。

七大生活習慣病の平均的な入院日数は、意外と長くない

多くの医療保険では、入院1回あたり60日までの保障になっています。
ただし、ほとんどの医療保険では、特約を付けることで、三大疾病や七大生活習慣病のときに、保障する日数を延長することができます(120日、日数無制限など)。中には、標準として(特約ではなく、もとから)、入院の保障日数を長く設定されている医療保険もあります。

ということは、60日まででは足りないのでしょうか?

図は、厚生労働省『患者調査』(平成26年)をもとに、入院日数の分布を表したグラフです。

入院期間ごとの割合の円グラフ

これによると、83.2%が29日以内に退院しています。60日以内に退院している人は、92.4%に上ります。

入院費用の大半を医療保険でまかないつつ、多少は自腹を切る覚悟はある、ということでしたら、60日までの入院保障でも、十分に役に立ってくれそうです。

ちなみに、120日までに入院保障を延長すると98%までカバーできます。もちろん、この方が安心度は高くなります。

しかし、60日を超えると、日数を延ばしても、%の伸びは小さくなります。
保険料と保障内容のバランスを考えると、60日というのは、ほど良い選択のように思えます。


三大疾病とか、七大生活習慣病のような重大な病気でも、通院で治療することが多くなっています。通院治療で頼りになるのは、医療保険より預貯金。

日本人がかかりやすい大きな病気を、三大疾病(がん、脳血管疾患、急性心筋梗塞)とか、七大生活習慣病(三大疾病+4つの病気)などと呼びます。

実は、これらの病気にかかったからといって、入院して治療を受けるとは限りません。というより、通院で治療する可能性は、それなりに高くなっています。

七大生活習慣病では、通院しながら治療に取り組む人の数が多い

厚生労働省『患者調査』(平成26年)をもとに、七大生活習慣病の入院患者数と外来患者数(=通院の患者数)を比べてみました。

病名 入院患者数 外来患者数
がん 129,400人 171,400人
糖尿病 20,900人 222,300人
高血圧性疾患 6,400人 671,400人
心疾患 59,900人 133,900人
脳血管疾患 159,400人 94,000人
肝疾患 8,000人 32,600人
慢性腎不全 24,100人 107,300人

入院患者も、入院前や退院後に通院するでしょうから、外来患者数の方が多くても不思議はありません。
とは言え、三大疾病以外の4つの病気、糖尿病、高血圧性疾患、肝疾患、腎不全では、外来患者数がケタ違いに多いです。
これらの病気では、通院しながら(外来患者として)治療に取り組む人の数が、とても多いのでしょう。

通院しながら治療がメインになる"がん"も、複数ある

また、三大疾病の1つであるがんでも、がんの種類によっては、通院治療がメインになります。

患者数が多い7つのがんについて、上と同じように、入院患者数と通院患者数を比べてみましょう。

がんの種類 入院患者数 通院患者数
胃がん 14,900 19,200
大腸がん 19,300 23,900
肺がん 5,500 15,400
肝がん 7,900 6,100
乳がん 5,200 24,200
前立腺がん 5,600 17,700
膵臓がん
5,200
3,700

肺がん、乳がん、前立腺がんは、通院患者数が圧倒的に多いです。
たとえ医療保険に加入していても、がんによる入院保障を日数無制限にしていても、通院で治療することになってしまうと、役に立ってくれません。


医療保険による保障を必要最小限に絞り込んで、浮いたお金を預貯金による医療費の準備に回しましょう。

ここまで、医療保険の限界を、いろいろとご説明してきました。しかし、限界があるからと言って、役立たずということではありません。

医療保険が真価を発揮するのは、想定外に病気・ケガが悪くて入院することになったとき。それも、想定以上に具合が悪くて、治療が長引くようなときは、頼りになります。

ただし、生涯の医療費という視点から見ると、医療保険の力は限られています。

冒頭に書いたとおり、将来の医療費の準備は、預貯金が軸になります。そして、想定外の事態への備えとして、そこに医療保険をうまく組み込んでいただきたいのです。

医療保険は役に立つものですが、手厚くし過ぎるとムダになる危険が高くなります。
医療保険による保障を必要最小限に絞り込んで、浮いたお金を預貯金による医療費の準備に回した方が、理にかなっています。下のような形で、うまく連携させたいです。

預貯金
  • 通院費用と健康保険等公的医療保険の保険料。
  • 入院費用の一部。
医療保険
  • 入院費用の全部か大部分。
  • 入院費用として使った預貯金の補充。

預貯金をどのくらい準備できるかによって、医療保険の役割は少し変化します。
預貯金に余裕があるときは、医療保険は、想定外に入院費が高くなったときの予備財源と、入院費用のために減った預貯金の補充として役に立ちます。

預貯金の余裕度が低いなら、入院費用は医療保険から、その他の医療費は預貯金からという役割分担なります。


 ご注意

統計データや保険の商品内容については、慎重に扱っていますが、古くなっていたり、誤りがあるかもしれません。保険の専門家に相談した上で、最終的に判断を下してください。